松任谷由実 / Voyager (1983年)

涼しそうなジャケだよなぁ。あたかもビル街が水没したかのように見えるが、実は上空に水が張られているのである。ジャケを180度回転させればわかる。
都会の象徴でもある高層ビルをあしらったジャケの通り、ユーミンには都会的あるいは東京的なイメージが付随する。ちょうど同じ頃の東京も、あちこちで街並が変り始めた頃で、ブランド・ブームとリンクして渋谷、原宿、六本木、代官山、自由が丘などといった場所が若い女性に注目され始めた。ユーミンの音楽がそういった現象と巧く結びつき、90年代初頭までは明らかに若いOL達の心を掴んでいた。そういった意味では、このアルバム等にはその当時の時代を感じさせる部分もあるが、サウンドや楽曲面で見ればわりと普遍性の感じられる音作り。元々ユーミンの作る楽曲には普遍性があって定評もあるが、アレンジやサウンドが意外にもオーソドックスで、古さを感じさせない。前々作『パール・ピアス』が先鋭的なAORの典型的サウンドであった分、かえって地味に感じるのだろうか。どこか70年代後半を彷彿させる、音のまろやかさである。