井上尭之バンド / 太陽にほえろ!'79 (1979年)

グアムにある大野克夫氏自前のスタジオで録音し、今まで大野氏一人で行っていた編曲作業も、他のメンバーに一曲ずつ担当させるという意欲作。となると、メンバーそれぞれの志向が強調され、バラエティーに富んだサウンドのアルバムかと思いきや、実際聴くとそうでもなく、意外に統一感がとれているのに驚く。基本的に、使っている楽器やエフェクトあるいはスタジオの環境が同じだからではないかと思われる。
井上尭之氏(ギター)、速水清司氏(ギター)、鈴木二郎氏(ドラムス)といったベテランミュージシャンならではの現代的でこなれたアレンジは、今まで多くの数をこなす大野氏のアレンジと比べても引けをとらないところが、さすがである。特に井上氏がアレンジした「行動のテーマ」は、既に番組開始の72年に作られた曲のリアレンジなのだが、初代バージョンとはガラリと変った都会的なアレンジは、同様にこのアルバムで大野氏によってリアレンジされた「太陽にほえろ!メインテーマ'79」と並び、新鮮さとインパクトのあるサウンドで完成度も非常に高い。鈴木氏がアレンジを担当した「アクションのテーマ」も既存曲のリアレンジであるが、変拍子を使ったリズムはドラマーならではのもので、キング・クリムゾンの曲を意識した一節も聴ける意欲作(本人から直接伺った)。
大野氏は、メンバーが担当した曲以外の全ての曲でアレンジを担当。さすが密度の濃いアレンジを数多くこなしてきただけはあって、いずれも素晴らしいサウンドに仕上がっている。特に「雨上がりのシーサイド」「トロピカル・ウィンド・サマー」といった新曲は、フュージョン的な風通しの良いサウンドが絶品。
アルバム全体的には、フェンダーローズやCPあるいはアープシンセといった鍵盤楽器、速水氏のコーラスの効いたクリアーなギターカッティングが強調され、夏のリゾート・ミュージックといった趣も感じられる。
井上尭之バンドにとって「太陽にほえろ!」のサントラ録音は、このアルバムが最後。実質解散はこの翌年である。